+++ WEB拍手創作<ロト紋>No11〜 +++

拍手創作 No.11 アステア


くるり、と鏡の前で一回転、ドレスのスカートが柔らかく空気をはらむ。
可愛らしくふくらんだスカートに満足し、鏡に向かってにっこりと笑顔を見せる。
服や髪型が変ではないかと、もう一度入念に確認していく。
裾を小さくつまんでわずかに足を引き一礼。淑女の仕草は完璧だ。
「姫様、とてもお上手ですわ。アロイス様もびっくりなさることでしょう」
「ほんとに!?」
「ええ、ばあやが保証いたします」
淡黄色のドレスを身に纏った小さな王女様は、ぱっと顔を輝かせてばあやの周りをくるくると回りだした。
王女のおてんばぶりには慣れっこのばあやは、おっとりと笑いながら諭す。
「これ、淑女はそのようなことなさりませんよ。裾を踏んだらどうします」
「あっ」
その場でぴたりと止まるのが微笑ましい。
王女の頭に合わせた小さなティアラと、蝶のモチーフに赤い宝石をあしらった首飾りを身につけさせる。
幼い顔にごくうっすらと白粉を刷き紅をさせば、とてもおてんば姫には見えない、美しい少女がそこに現れた。
「お綺麗ですわ」
ばあやは満足げに頷いた。
「アロイス様から贈られたドレスも、お化粧も、みんなとてもよくお似合いですから……さ、参りましょう」
「本当に変じゃない?」
王女は不安そうにばあやを見上げる。ばあやは愛しい姫を安心させようと、薔薇色の頬に軽くキスをした。
「あんまり綺麗だから、皆腰抜かすほど驚きますよ、アステア姫」
ばあやが頷くと、王女の顔がきりりと引き締まった。
ドレスにはいささか不似合いな表情だが、大好きなお兄さまに会えばすぐにも笑顔になるだろう。
微笑ましく見守るばあやの優しい視線を背に受けて、小さな淑女は扉の外に一歩を踏み出した。




2009.3.3 No.11up
文責 イーヴン