PST様より ディアミリイラスト

魔法使いと少女
君と風に舞う イメージイラスト

以前オフで出した『君と風に舞う』のイメージイラストです!
ディアッカ=風魔法使いのイメージで描いて下さいました。
見てると顔が勝手にほころんでいきますvvv
PST様、ありがとうございましたー!!

没にした君風テキストが出てきたので一緒にup。
しかし読めば読むほど、なんでこれを没にしたのか分からない。こっちの方がええやん。


あの時、助けてやろうか、と声をかけたのは、本当にただの気まぐれだった。
死にそうなのに死なない精神が面白い、と思ったのだ。
そこに『かわいそう』だとか、『助けてやらなければ』、といった殊勝な気持ちなどどこにもなかった。
新しい遊び道具を見つけただけ。偽善よりタチが悪い。
崖の上に佇む、どこから見ても凡庸そのものの少女―――ミリアリアは、最近恋人を失ったばかりだった。
あまりにも王道を行く話で、不謹慎だと分かっていても、ディアッカは笑いを堪えるのに必死だった。
恋人が死んで悲しい。だから後を追おうとしたけれど死にきれなかった。彼を愛した記憶だけを糧に、悲劇のヒロインは生きてゆく……ひとつお話が出来上がる。
彼女が普通の女と違うのは、本気で思いつめながら、それでも踏みとどまっているところだ。
強い女は嫌いではない。
むしろこんなに若く、『普通』を地でいくような女が、魔術師並の意志の強さを持っていることに感心した。


「助けてやろうか?」

そう言われた時、この人は何を言うのだろうと思った。
その時初めて、相手の顔を『目で見た』。
太陽のように眩しい金の髪に目を射られる。
見たこともないような色合いの美貌がそこにあって、もしかして実は自分はもう死んでいて、天使が迎えに来たのかとすら思ったのだ。
「記憶を消せばいい。その痛みが消えるまで」
優しい声に聞こえた。トールとは違うけれど、心の深いところまで響いてくる声。
ミリアリアは反射的に頷いていた。
忘れたくはない。けれど、このまま生きていても同じだという予感があった。
天使が笑う。いいや、もしかしたら悪魔だろうか?
悪魔は天使に化けて、甘い誘惑をもちかける……そう、今目の前にいる彼のように。
「正しい判断だ。死にながら生きるより、余程いい」
死にながら生きる……成程、言い得て妙だ。
死んだ相手を想いながら生きるのは、死んだも同然だろう。
「対価はどうする? お前に何が払える?」
魔法の対価ってどんなもの? と聞くと、魔法じゃなくて魔術、間違えないように、と彼は言う。
何がどう違うのか分からないが、とりあえず頷いておいた。
「何でもいいよ。お前にとっての価値あるものなら」
そんなものはない。今あるのはこの身体だけだ。
もはや大事にする必要もない、すぐに壊れる女の身体。
これでいいのなら差し出そうと言うと、彼はさすがに驚いたようだった。
「名前は?」
「ミリアリア・ハウ」

「一時的な記憶の消去。対価はおまえ自身、か。なぁ、ミリアリア・ハウ。本当にそれでいいのか? 契約ってのは絶対なんだ。俺が術を施す以上、お前は必ず俺に対価を支払わなきゃならないんだぜ?」

それでひと時の安らぎが得られるならば。
恋の苦しみも失う悲しみも癒せるならば。


「構わない」

06.12.6