+++ retaliate +++

2月17日、誕生日だというのに、自宅に戻ったミリアリアは非常に不機嫌だった。
いや、最初は良かったのだ。知人から祝福の言葉をかけられたり、ささやかなプレゼントをもらったりして、ちょっとうきうきした気持ちで過ごせたのだが。
その気持ちが一気に下降したのは、家に戻って宅急便の不在票を見てからだった。
ひどく不安感が募る。誰から届いたものか、それを見ただけでは分からない。
嫌な予感は刻一刻と強くなったが、友人からのプレゼントという可能性もある。
ミリアリアは意を決して業者に連絡をとり、念のため発送元も確かめた。
カガリ・ユラ・アスハ様からの荷物です、という返答に安堵したのが間違いだった。
あいつ……ディアッカなら発送元を偽るくらいのことはすると、どうして気付けなかったのだろう。
カガリは「何でお前ら別れたんだ? お似合いだったのに」などとさらっと言ってくれる女性なのだ。
ディアッカがカガリに連絡をとって、「ミリアリアに誕生日プレゼントを贈りたい」なんて言ったら、即座に引き受けるような人だということをどうして忘れていた!!
そして届けられた荷物に瞠目し嘆息する。
両手で抱えきれない生花の花束に始まって、服らしき箱がいくつか、多分アレはアクセサリ。
プレゼントの山を前にして、ミリアリアは心中の嵐を極力見せないように応対したが、配達員のバイトの青年はかなり逃げ腰になっていた。
カガリの名前で来た以上、受け取らないわけにはいかない。
考えたわね、とミリアリアは背後に怒りの炎を燃やす。
青筋を浮かべつつ炎を背負ってひきつり笑いをしている女性の前で、にこやかにできる図太い神経の持ち主はそうそういない。
ミリアリアは、哀れな青年をびびらせるだけびびらせて、僅かに溜飲を下げた。
だがもちろんそれだけで治まるわけもなく。
――振ったっていうのに性懲りもなく。
大量のプレゼントは、ハッキリ言って邪魔になるだけだ。
女性の一人暮らしの部屋の広さを勘違いしてるに違いない、あのセレブ男。
「生花なんて枯らしちゃうだけなのに……もうあのバカはっ!!」
ミリアリアはぷりぷり怒りながらもてきぱきと荷物を片付けていく。
メッセージカードはない。だがこれがディアッカからの荷物だとミリアリアは確信していた。
こんな馬鹿をやらかすのは彼しかいないからだ。
箱を開けてみて……服の趣味の良さだけは認めるが、絶対に着てやるものかとカクテルドレスの類はそのままクローゼットの底に沈めた。
生花はいくつかに分けて、花瓶やグラスに生けてみる。
部屋が少し明るい雰囲気になって、いずれ枯らしてしまうと分かっていても、それはミリアリアの心を少し和ませた。
しかし。
――本当にどうしてくれよう?
やはり仕返しをしなくてはなるまい。
お返しではない、仕返しだ。
こんな迷惑な荷物、本当なら受け取らずに全部プラントに送り返したいところだ。
責任とってカガリに送り返してもらおうか?
ミリアリアはしばらく思案に暮れる。
……優しく香る花の前で、それに似合わぬ邪悪な微笑が零れた。

ディアッカの誕生日は3月末。
一般人がプラントに荷物を送ろうとすると、最低でも2ヶ月はかかってしまう。
それでは間に合わない。
半分に縮めるには…………
「やっぱりカガリに責任とってもらわないとね」
ミリアリアは雄々しく立ち上がり、アドレス帳を手にカガリへのホットラインを繋ぐ。
「アイツの誕生日に間に合うように、送ってもらいたいものがあるの」
画面越しでも凄みのあるミリアリアの笑顔に退いていたカガリは、ミリアリアが希望した荷物について、一瞬絶句した後、「本気か!?」と屋敷中に響き渡る声で大絶叫した。



えと、実は次の話(Irony)の前フリ(笑)ディアッカ誕生日おめでとう。
タイトル変わったw(3.30)
2006.3.29 イーヴン