+++ WEB拍手創作<種>No1〜No.2 +++

拍手用創作 種/No.1 ディアッカ×ミリアリア微エロ


「ディアッカ! アンタの声反則! しばらく私の前で喋っちゃ駄目」
「はい?」
「だから喋るなって言ってるの!」
顔を真っ赤にして怒鳴るミリアリアも可愛いなあ、などと考えるディアッカの恋する脳みそは沸いて溶けかかっていたが、それなりの判断力は残っていた。
ミリアリアの命令は理不尽すぎる。彼女はとっても厳しいが、突然こんな訳の分からないことを言う人間ではない。何がしかの理由がある筈だった。
それに「私の前で」と限定している。
……そういえば何日か前、「オネガイだから耳元で話すのやめて。ざわざわする」と言われていた。
耳に息が吹きかかるのが嫌なのかな? とディアッカは思っていたのだが。
ミリアリアの台詞は「アンタの声反則!」――
これは、もしかして、声の方?
ふっとディアッカの口が綻んだ。
彼にしてみればちょっと口元を緩めただけのつもりだったが、真正面で見ていたミリアリアは後日こう言った。
「ものすっごくイヤらしい笑みだったわ」、と。
そのイヤらしい笑みに怯えて身を引いたミリアリアの腕を褐色の手が掴み、身体ごと引き寄せる。
「ディ、ディアッカ!?」
構わずミリアリアの耳朶を甘噛みする。細い肩がびくっと揺れた。
かっちり留められた襟のホックを外して首をあらわにさせ、耳から輪郭をたどり喉まで舌を這わせる。
「ディアッカ! やめて!」
怒りとは違う理由で赤くなった彼女の顔を見返し、ディアッカはにっこり微笑んでみせて、自分の口を指差す。唇に沿って横に一本線を引く仕草。
あっけにとられた表情のミリアリアに軽くキスして、あっさりベッドに押し倒す。
「ちょちょ、ちょっと! 駄目だってば、聞こえてるでしょ!」
――そりゃあ聞こえてるけどね。ちょっと思い知ってもらわないと。
声を封じたところで何の意味も無いということを。
ほんの少しだけ申し訳なく思いつつ、ディアッカは嬉々として、そして一言も言葉を発さずにミリアリアの服を脱がしにかかる。
ミリアリアは懸命に抵抗を続けるもディアッカが動きを止める気配は無い。
彼が強引なのはいつものことだ。気がつけば流されて彼のペースに乗せられている。
でも今日は少し違っていて、どこか、違和感を感じるのだ。
あるはずのものがない。
そう、いつもミリアリアを蕩かすあの声が。
「……ッ、ディア、ッカ! いい加減にして! 喋るなって、言ったのが、気にいらないの!?」
ディアッカはようやく手を止めてミリアリアの顔を覗き見た。
ミリアリアはむっと睨み返す。互いに無言で見詰め合う。
先に折れたのはディアッカの方だった。ミリアリアの肩に顔をうずめて身を震わせて笑い出す。
「……ナニがおかしいのよ」
ディアッカがもう一度口を指差すと、ミリアリアが怒って「もういいわよ!」と叫んだ。
「だってミリィ、喋るなって言うのは、自分がその気になっちゃうからでしょ」
ミリアリアは口を貝のように閉じてそっぽを向く。自分で正解をバラしているようなものだ。
ディアッカはくすくす笑いながらミリアリアの耳元に唇を寄せた。
「無駄だよ、ミリィ」
ミリアリアの肢体が彼の身体の下で硬直するのがわかる。
「黙って触られるの、怖かっただろ? それに」
ミリアリアが固まっているのをいいことに、短いスカートの中に手を滑り込ませる。
抵抗しようったってもう遅い。捕まえた。
「ミリィがその気にならなくても、俺はいつでもミリィに触れたいから」
ミリアリアの抗議の声は、すぐに塞がれて音にすらならないまま封じられた。

ウチのディアッカはこれがデフォルトっぽい。
狡猾ディアッカ推奨。でもタダのエロガキ。



拍手用創作 種/No.2 ミリアリア→ディアッカ


目の前に、水の入ったコップがひとつ。空のコップがひとつ。
水を満たした方のコップを持ち上げて、ひとくち啜る。
ただの水。宇宙では貴重なものだが、何の変哲もない、水だ。
目の高さに持ち上げて向こうを透かし見ると、怪訝そうにこちらを伺っていたクルーが何人か、慌てて視線を逸らすのが見えた。
別に嫌な気持ちはしなかった。自分のしていることは確かにおかしいと自覚しているのだから。
空のコップを正面に置く。そこに、今手に持っているコップの水を注ぎ入れる。
小さな渦を作りながら水は嵩を増やし、しばらく波打ちながらもうひとつのコップの中に収まった。
水滴だけを残して空になったコップをテーブルに置き、新たに水を注がれたコップを手にする。
さっきと全く同じ水。移し替えられただけの。
「……こんなに簡単にいけばいいのに」
「ナニが?」
艶のある声が頭上から降ってきた。
一瞬びくりとしたが、慌てず騒がず顔を上げる。
眉を寄せて嫌そうな表情をしたが……うまくいっただろうか。少し不安になる。
「何か用?」
「や、ナニやってんのかなって」
「見ての通りよ」
「……すいませんミリアリアさん、説明してもらわないと分からないデス」
「コップからコップに水を移しただけよ」
口をつけて、一息にあおった。ぬるくなった水が喉を滑り落ちていく。
ただの水は水の味しかしなくて、ひっかかることもなく簡単に喉を通り抜ける。
たん、とコップをテーブルに置いた音が、ひどく響いてきこえた。
息が苦しい。胸が塞がる。新たに生まれた恋心はじりじりと全身を焼き焦がす。
まだ気付かれてはならない、まだ。
トールが死んだのだと認めきれていなくて。最初の恋は終わったのだと信じたくなくて。
――ディアッカに対して抱いた想いを許容できない。
上から下へ、流れ落ちる水のように。
簡単に心を移せたならば、こんなに苦しむことはないのに。
ディアッカを想う気持ちとトールに対する罪悪感が心をぎしぎしと軋ませる。
ミリアリアは人間で、感情には様々な色や味がついていて、水のようにするりと飲み下せない。
育ちはじめた気持ちは切なく甘いのに、小さなトゲが貼り付いていて、感じるほどに心が傷つく。
そしてそのたびに―――こんなにも彼が好きだと気付くのだ。





2005.7.20 No.1up 2009.3.3 No.2up


文責 イーヴン