DM性別逆転SS 11

あたし達は今後の一時拠点としてL4、メンデルへ向かうことになったらしい。
しばらくはMSパイロットにとっては暇な日が続いた。
オーブにいる間が忙しすぎたから、余計にそう感じるのだとも言える。
もちろん暇だからってごろごろしてるわけじゃない。ただでさえ人手不足のこの船で堂々とサボれるほど、あたしの心臓は強くない。……ほんとだってば。
ザフトにいた頃はエリート扱いされていたから、自分の機体の整備以外の仕事ってあまりやったことなかったんだけど、ここじゃそうも言ってられない。
アレやらコレやら仕事を回されて……いやよくもまぁ、仲間になったばかりの元ザフト兵をここまで信用してくれるもんよねと、ちょっと泣きたくなるくらい。
曲がりなりにも元エリートの実力でこなしたりしたもんだから、「じゃあコレも頼むわ」と更に増やされた。
…………イイけどさ。居候だし。
ナンか使い勝手のいいバイトが増えたとか思われてるだけなんじゃないだろうか……。アスランも似たような目に遭ってるみたいだし……。
プログラムを走らせながら、あたしはぼんやり考えていた。
本格的に脱走兵になってしまったというのに、随分と呑気なものだと自分でも思う。
こっそりと雑用仕事に文句を言いつつ、ナチュラル達の間に混じって過ごしている……まずその事実が、あたしを知る人間が見たら信じられないと言うだろう。
でもあたし自身が、AAにいることに全く違和感を感じていない。
それはきっと―――あたしが自分で悩み考えた上で決めたことだからだ。
きっかけはミリアリアに対する感情だったかもしれない。衝動に突き動かされたとも言える。
けれどそれは、その後も含めて、全てあたしが自分の責任に於いて為したこと。
たとえ愚かな決断だと言われようとも―――
ピーッと、ランの終了を告げる警告音が響いて、あたしははっと思索から覚めた。
すごい、完璧と自画自賛して、モバイルを閉じコードを引っこ抜く。
艦内時間で22時を過ぎている。格納庫に残っている整備の人間もかなり減っていた。後はバスターのチェックだけして寝よう。
トンと床を蹴り、身体を宙に浮かばせる。
バスターのコクピットにとりついて、中に入ろうとしたその時、見覚えのある人影が見えた。
格納庫の入り口。茶色の髪、青い軍服。
一瞬、どきんと心臓が跳ねる。……って何緊張してるのよ、あたし!
ミリアリアはきょときょとと周囲を見回して、誰かを探しているようだった。
彼が探しに来るとしたらマードック? それとも―――
なんとなく息を詰めて見つめていると、その内彼がこちらを見た。
目をそらすかと思いきや―――まっすぐあたしの方へ向かってくる!
無重力の世界を、ゆっくり漂ってくるミリアリア。
ちょっと顰めたような顔をして、それでも青い瞳はまっすぐにあたしを見て。
戦闘前の緊張とは違う心臓の高鳴りが全身を支配する。
―――あたしを探しにきたの?
だとしたら……それが、こんなに、嬉しいなんて。あたし……。


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2005.9.6 イーヴン