DM性別逆転SS 12

ミリアリアはちょっと顔をしかめてこちらに漂ってくる。
あたしは何故だか息を詰めて、彼がやってくるのを見守っていた。頭の中は疑問符でいっぱいだった。
一応落ち着いていると言える今の状況で、こんな時間に連絡事項が回ってくるはずもなし。
あたしはミリアリアと仲良くなりたくて話しかけてるけど、彼の方からあたしの方に来る理由ってものが一つも思い浮かばない、残念なことに。
だからミリアリアが開口一番「早く寝ろ」と言ったとき、間の抜けた返事しかできなかったのだ。
「はぃ?」
「だから、早く寝ろって。『朝』からずっとここに詰めてるって聞いたから……」
ミリアリアはほんの少し目をそらした。心なしか、顔が赤いような気がする。
「……根つめると身体壊すよ。コーディネイターでも……女の子なんだからさ」
言葉が脳に染み渡るまで数秒を要した。大抵のことは聞いてすぐに理解できるのに、元エリートが何たるザマだろう。
それくらい意外すぎて―――意味を理解すると同時に、彼の言葉を心に刻み付ける。
ほんとはこんな事しなくてもいいくらいあたしの記憶力は優秀だけど、これは胸に刻みつけておかないといけないと思った。
だって。
「心配……してくれたの?」
「……………」
ミリアリアは無言だったけど、代わりに正面からあたしを見つめた。
胸の奥がじわりと火照って、ゆっくり身体中に広がっていく。
嬉しい、と。単純にそれだけの気持ち。
寝ろと言われたのに、細胞の一つ一つが目を覚まして歓喜の歌を歌い出す。
この気持ちをどうやって表そう? 言葉に出せば雲散霧消してしまいそうな気がした。 だから、あたしは、

「ミリアリアっ!」
「っディア……っ!?」

彼に思いっきり抱きついたのだ。


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2005.12.31 イーヴン